「嗅覚リハビリテーション」との出会い

こんにちは!蓄膿症(副鼻腔炎)でお悩みの方の為の鍼灸院の橋本由紀子です。

当院にいらっしゃる副鼻腔炎患者さんの深刻なお悩みの一つに、嗅覚障害(匂いがしない、食べ物の味がわからない)があります。

匂いがしないお悩み、とくに全く匂いがしない期間が長い方の場合、回復に時間がかかり、匂いの回復がみられないまま鍼灸治療を終える方も少なくありません。

そこで「匂い」の回復に鍼灸治療と併用してアプローチできる方法はないかと探っていたところ、とある文献に運命的な出会いをしました。

東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科の森恵莉先生による「嗅覚リハビリテーション」です。

「匂いがしない」お悩みの方の回復に自宅で取り入れられる方法なので、今回は森恵莉先生の「嗅覚リハビリテーション」の文献に基づいて、解説していきたいと思います。

参考文献:「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」 2017.8月号 自宅でできるリハビリテーションのレシピ 医学書院 P698-P704

匂いがしないのはなぜ

鼻の奥にある「匂いを感じる場所(嗅上皮)」が障害を受けることで、匂いが感じなくなると言われています。

さらに詳しく言うと、「匂いを感じる場所(嗅上皮)」に存在する、「匂いを感じる細胞(嗅細胞)」が減少することで匂いが感じなくなっています。

匂いを感じる細胞(嗅細胞)は絶えず再生しているため、一時的に嗅細胞が減っても、28日で生まれ変わることができます。

【匂いが回復するパターン】

新しい匂い細胞が生まれる

↓ ⇦7〜14日の間に「匂いの情報」が入る

匂い細胞が成熟

28日で完全に新しい細胞に置き換わる→匂いを感じる

匂いを感じる細胞(嗅細胞)が生まれ変わるためには、「適切な時期に匂い情報の入力」がないと匂いの細胞は成熟しません。

成熟できない匂いの細胞は死んでいくので結果的に匂いの細胞は減少し、匂いを感じないままになります。

【匂いが回復しないパターン】

新しい匂い細胞が生まれる

↓ ⇦7〜14日の間に「匂いの情報」が入らない

匂い細胞が成熟できない

匂い細胞が死んでいく→匂いが感じられない

大事なことは、新しい匂い細胞が生まれてから、「7〜14日の間に匂いの情報が入る」ことです。

具体的な「嗅覚リハビリテーション」の方法

①グルマン(食品)系:バニラ、カカオ、チョコレート
②フローラル(花)系:ジャスミン、ゼラニウム
③シトラス(柑橘)系:レモン、ミカン
④ウッディ(植物)系:セダーウッド
⑤スパイス(香辛料)系:クローブ
⑥ハーブ系:ペパーミント、ラベンダー、ユーカリ 

引用:「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」 2017.8月号 自宅でできるリハビリテーションのレシピ 医学書院 P703

・三叉神経を刺激する香り、このなかではシトラス、ハーブのグループのものを必ず1種類入れる
・6つのグループの中から1種類好きな香りを選び、うち4種類の香りを嗅ぐ
・1日2回(朝晩)
・12週間ごとに4種類を変えて、36週間(様々な週数の臨床実験が過去にもなされている)

「嗅覚リハビリテーション」は嗅覚障害の56名のうち40名に改善が見られたというHummel 氏による研究結果があります。

こちらの結果は「神経性」の嗅覚障害に対するものですが、

慢性副鼻腔炎を含めた気導性嗅覚障害に対する効果については十分な検討はなされていないが、いずれの原因であっても嗅覚障害を訴える患者に対して患者自身で行うことのできる簡便な方法であり、効果が期待できる新しい治療法であるいえる。

と森恵莉先生は述べられています。

まとめ

匂いがしないお悩みに対して、積極的に効果的に選ばれた匂い刺激を入れていくことは、匂いの回復に期待ができます。

鍼灸治療が匂いの嗅細胞の再生、増大に影響を与えられているのか、近い将来研究され数値としても皆さんにお見せできる日がくることを期待しています。

わたしもその研究の手伝いをしたいと本気で思います。

現時点でわたしにできることとして、皆さんに情報提供をして、院内でも香りを嗅ぐコーナーを用意していきます。

そして匂いのレシピをご自身で用意するのが難しい方には当院でアロマキッドを販売できるようにします。

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